2022年11月14日(月)
子どもを認めるということ
i0101i0201i0301
 最近の幼稚園は各クラス、製作活動なども盛んに行われています。芸術の秋ですね。

 子どもたちが何かを見せに来た時、私たちは子どもたちを受けとめ、認めることを大切にしたいと考えています。しかし、認める時の言葉の選び方には、まだまだ工夫の余地があるように感じます。

 日本人は諸外国と比べて”自己肯定感”が低いという研究結果が出されています。(上記の図、参照)
「自分はダメな人間だと思うことがある」という質問に対して、日本は「とてもそう思う・まあそう思う」という回答が全体の72.6%もいました。米国では「とてもそう思う・まあそう思う」という回答が45.1%にとどまっています。つまり、「自分はダメな人間だと思うことがある」と思う子が日本の方が多いことがわかります。

また、「自分には長所がある」という質問に対しても、日本では「とてもそう思う・まあそう思う」という回答が全体の62.2%にとどまっているのに対して、米国では91.2%の子が「とてもそう思う・まあそう思う」と回答しています。こちらでも日本では「自分には長所がない」と思っている子が全体の4割近くいることが明らかとされています。

 何故、こうした数値が出てしまうのでしょうか。その一つには、日本人の国民性(謙虚さ)が影響していることは挙げられます。しかし、日本の自殺数などからもわかるように、それだけが原因ではなさそうです。

 自分の事をたくさん認めてもらった子どもたちは自己肯定感を高め、生活に対して意欲的に動くようになります。私たちは、子どもたちが製作などを見せに来た時、ついつい「すごい!」とか「上手!」という言葉で子ども達を褒めます。

 ある研修で、「日本人は、褒めるのが下手だ」という話を聞いたことがあります。「すごい」「上手」という言葉は、どんな作品を持ってきてもかけられる言葉であり、100人の作品に100回使用しても通用する抽象化された言葉です。また、「すごい」「上手」という言葉をかけ続けられることによって、「上手く描かなくてはいけない」という強迫観念を抱く子もいるようです。
※もちろん「すごい」「上手」を言ってはいけないわけではありません。

 諸外国の子育ての中で大切にされている事の一つとして「具体的に認める」・「評価をしない」ことが挙げられます。
例えば、上記の写真のような模様(さくら組のSちゃんが見せてくれました)に対して、「綺麗」「上手」と評価を伴う言葉で褒めるのではなく、「先生は、水色と緑のシマシマの組み合わせが細かく描けているところがとても好きだなー!」と”その子の描いたものにしかかけられない言葉”を使ってたっぷりと認めたいと思います。

 ここで、紹介したいのが”Youメッセージ”と”Iメッセージ”です。
Youメッセージとは「あなたは、絵が上手ですね」というように、「あなたは」から始まる言葉です。「Youメッセージ」は相手を「断定」する言葉となる事が多いようです。
 それに対してIメッセージは、「私は、あなたの絵がとても好き」というように「私は」から始まる言葉です。「Iメッセージ」はあくまでも「私の感じたこと」を相手に伝えるメッセージとなります。私の感じたことなので、相手を「断定」したり「評価」したりする言葉になりにくい特徴があります。

 私たちは、子どもたちが自分の存在の”良いところ”も”うまくいかないところ”も含めて「自分は認められている・受け止められている」と感じられる幼児期を過ごしてほしいと考えています。
上辺だけで褒める保育ではなく、その子にとって”本当に認められた”と思える言葉を私たちは追究していきたと考えています。

※自己肯定感の低さの原因は大人の言葉のみが起因しているわけではありません。要素の一つだと考えていただければと思います。
All Rights Reserved. Copy Rights 2014 Shinmei Yochien